車の動きも悪く、ここのところの諸物価の上昇で、最低水準の販売を記録中に“今しかない!”とのことで、久しぶりの欧州の旅へ出かけてきました。
● introduction ●
日頃(今まで)休む事は全く無く、自分の中に徐々に「車屋でございます」みたいな、先ずなりたくない自分になりかけていて、ここで心機一転『活きた車たち』を見るべく、フランスのル・マン・クラシックへ・・・と思っていたが、突然代理店の都合にてキャンセル!急遽英国の「GOOD WOOD」へ行くことになった。しかし4年ぶりの本国での開催になる「ル・マン・クラシック」と今回の「GOOD WOOD」は同日開催らしく、少々嫌な予感を感じつつ、9日夕方に英国に向け出発した。
GOOD WOOD・・・
1993年に始まり、今年15回目の開催となる歴史的にも文化的にも意義深い一大イベントで、1900年代前半のヴィンテージカー、初期のレーシングマシン・バイク、最新F-1マシン、そして何より歴代のスーパースター・グランプリドライバー達に会場の中で直に出会えるチャンスが多々有る、英国自慢の15万人以上の人々が集まる一大スペクタル!とか。
しかしフランスのル・マン・クラシックと同日と言うことは?ひょっとして“あの車達”は?二分する?どちらかへ流れて本当に見たい車は今回のGOOD WOODにいるのか?・・・・・
● the first day ●
朝6時起床。実は同行者にたたき起こされたと言うべきか?実の息子は朝が早い。さすが修行中の身。ちゃんと早起き出来るのだ。子は育ってる!
英国の食事はマズイと聞いていたが、エッ??美味しいですよ!このソーセージ・パン・果実・そしてベーコン。美味しいおいしいと2回おかわりしてしまう。
そして一路GOOD WOODへ向かう。高速道路走行中、いろんな車たちが追い越して行くが、どれもこれも皆GOOD WOODへ向かっているのか?そんな気になるくらい、少しずつ道が混みだし、看板も見えてきていよいよ気分も最高潮になり、高ぶりそしてこの美しい田園風景の中にあの名車たちが並び、そして疾走するのだ。125Sは?166は?250は?917は?マトラは?ロータス49は?ホンダRA271、272は?
はるか森の遠くから“ファオ〜ン・ファ〜ン!カ〜ン!!”と聞こえてきて、空にはヘリが飛び廻り、飛行機も何機も飛んでいて・・・。前を歩く老夫婦は仲良く手をつないでこの入り口のグリーンピクニックを楽しんでいる様子はやはり日本でのイベントとはふた味以上違う気がします。
いざ入場!チケットを切ってもらい森の中のスロープを150m程歩いて、正面にデ〜ンとお城のような立派な建物は、ここサウス・サセックスのチャールズ・マース伯爵の邸宅で、この巨大な会場である敷地は何と個人の邸園なのだ。
「欧州の貴族の力はさすが!」なんと美しい敷地か!そして園内に入ってみたら人の多さは普通ではない。至る所に巨大なブースがあり、テントがあり、それらの中に今回のメインの宝物である車たちが居るのだ。
命を与えられたそれらが生き生きとコースに入っていったり、そして戻ってきたり、もう最高です!!
M.Bのブース、ローバーのブース、そして日本のトヨタ・日産数え上げたらきりが無いくらいのブースと土産品のテント群、そして子供の遊園地まであり、その中央を縫うように、あの有名なレーシング・ヒルクライムコースが走っている。
なんと少しずつ上りになっていて、後半はかなりの急坂になっていましたよ。知ってました?その遠くて上り坂のキツイこと、何キロ歩いたか?足首が午後にはついに動かなくなってしまう位、辛い上り下り。その真横をレーシングマシンたちが快音をたてて全開で走っているのです。
でも何か変、何かが足りない、いないのだ。何かが・・・・
おもいっきり舞い上がったあとの下降線上で気付いた。250がやはり無い。ポルシェ911?…日本軍団は?エッ?何?日産のみ?!トヨタさん、ホンダさん!どうなってるの?思わず力が抜けてきた。疲れもあるのだろうが違う!予想がズバリ当たって欲しくない。。。
予想が見事当たりだったようだ。たぶんだけど、あの“LE・MANS”へ大半が行っているのだろう。にしても何たる運命か!
● the second day ●
今日の朝の出発はもっと早いらしく、(昨日はここの朝食がメチャ美味しくパクパク食べてて遅くなり、渋滞にはまった為)でも僕はもうNoサンキュー!今日2日目は行かないと決めた。だってあまりの失望感が、旅の疲れと共に体を動かそうとしなかったし、なにかしらこのホテルの横の美しい森のような公園で一日過ごしたほうがまだ良いと直感的に思ったことも事実なのだ。
今回の旅は自分を入れて4人旅で、他の3人はそそくさと用意をして出て行った。ただ息子は僕の顔色を見て、「本当は行きたいくせに!でも年?だから体を休ませた方がいいし、代わりに僕がビデオ撮影をしてやろう」と決めていたらしく、実に頼もしかった。「お前に任せたヨ!!」
部屋のドアノブにドント・ディスタブ!の札も付けて朝はおもいっきりのんびりし、あの美味しい朝食もゆっくり楽しみ、『晴れ男』の僕は、今日は一人英国の街を散策するということで公園に入った。
空気がひんやりし、オゾンを肌で感じ、英国特有の雲が多い空から、時折真っ青な青空が見え隠れし、何と異国情緒あふれる光景か。やはり“妖精”って本当にいるんだ、きっとここに住んでる!!なんて思わせてしまうくらい美しい。
1912年にそう!ここ“サウサンプトン”の港から、あの“タイタニック”は出航し、そして遭難したのだ。1997年に映画でも大ブレークし、僕も何度も見たはずなのに・・・。じゃ、きっとメモリアルセンター?か何か有るに違いない!とホテルに戻り、フロント嬢に聞いたら、ここからタクシーで10分のところにそれが有るとの事でさぁ出発!もう先ほどまでの気分が180°回転し、本国と8時間差おかまいなしの電話で報告を入れると、さらになんとOLD TOWNが有り、僕の好きなTUDOR Houseも近くにあるとか。これは是非見ておかなくては・・・。
横の石畳の坂を下るところがあり、そこに古い扉があり、のぞきこんだら「ハロー!」って!ン??
「ようこそ、チューダーハウスに」って愛らしい笑顔がそこにあった。
「どこからいらっしゃいましたか?」
「はいJAPANです」
「私はボランティアですが解らない事があったら聞いてくださいね」
と実にかわいい笑顔で答えてくれた。人の情、心というか日本ではまず有り得ないであろう気さくさ、ひとなつっこさか?今日だけで何人の人に何言わぬ助けをしてもらったか?
今日一日学んだ事。
ひとつの事のみとらわれず、全方位を見極めておくこと・・・・。
でないと、せっかくの本物を大切なものを見落としてしまうということ。
心底この街にいつか住みたい。住むかもしれない・・・・
● the third day ●
もう!駄々っ子だぁ!とひとり反省の僕は、3日目のGOOD WOODは行くことにした。
その時点、朝9時には、もうひとりの“彼”は5時半起きにて出発していたらしい。なんとたくましいことか!しかしやはり自分の中には、あちらで(会場内で)2〜3時間土産の件も決めて、見落としが有るかも?等、ささやかな期待も実は有るので過ごすことにする。
今日も晴れ男のせい?!で快晴で、雲が多いが時折射すような日差しが体を焼く。
会場に到着すると、初日から聞こえていた“不整爆発”しているであろう現代F-1のみっともないサウンドが聞こえている。
『エベベベベ〜〜〜〜ェ!!ベェ〜〜〜、ベ〜〜〜ェ!ベベベーエ〜〜〜〜〜!!!』
まるで狭くてヤダヤダ!って暴れているような音である。
やっぱり早く土産品を見つけて帰ろうってんで、初日には行っていないエリアに行くことにした。テクテクテク・・・足が重い!というよりも足首がもう既に動かないのだ。こんなのは初めての経験で実は自身体力には相当の自信があったのに・・・
目的はほぼ達成したし、これで今日はもう帰ろうということで、同行の案内人の方にTEL、無理言って息子と共々早々に帰ることにした。
これから息子と昨日と同じサウサンプトンの街を再び訪れるつもりなのだ。あの美しかった街の話をしたら、モーレツな反応で絶対に行きたいし、ましてタイタニックには特別な想いがあったようで、又一緒に行く事になったのです。今日はどんなハプニングがあることやら。。。
● the final day ●
そしてその村のはずれに?THE NATIONAL MOTOR MUSEUM?の看板を右折し入場した。美しい森の中にそれは建っており、「フゥ〜ン、結構近代的なとこなんだぁ!」と・・・。車たちが生きている。プロストのF-1からブガッティまで、天井の空間もとてもうまく利用して展示されているのだ。1800年代の店舗も復元され、まるで本物のお店みたい!前日までのグッドウッドのあの喧騒の中からは、まるでウソのように今回は静かに見ることが出来る。時間もゆったり流れているような。。。
そこへのアプローチはもう美しいなどという言葉で形容してはいけない程、息を呑む美しさ。広大なイギリス邸園を中央にかかえ、ヘンリースコット卿(初代の所有者)が1870年に拡大する家族の為に、さらに拡大した華麗な宮殿が目前にそびえ立ちます。良く手の入った芝生と美しい敷地の中、どこから見ても絵葉書以上の美しさです。今日は現在の住人であるモンタギュー卿一族がプライベートの敷地でちょうどランチタイムらしく、お庭にて姿を見ることが出来ました。いいなぁ、こんな綺麗なところに住んでるなんて・・・。
「ヘロー、ウェルカム!」正面にメイドさんがふたり!ハリーポッター?アガサクリスティ?。。。。頭の弱い僕にはどう形容表現したらいいやら。とにかく絵になるお二人さんがブリティシュスマイルで「どうぞ、ゆっくり見て楽しんでいってくださいね!」って!クラクラヘロヘロメロメロ〜かわいい!!そしてなんという品があるだろうか!ダイニング・礼拝堂・リビングそして書斎と豪華、華麗以外の言葉が見当たらないです。ステンドグラスや大窓から再び芝生の奥の村々の眺めは又一層美しく見えました。
時間よ、止まれ!でもう少し、あと少しの時間ここに居たいけど、所詮僕は旅人。4時にはヒースローへ行かなくてはとここを後にした。
今回の旅は少しでも安くと思い、北京にて乗り換えのチャイナ・エアライン利用で、まぁ思ってもいなかった中国の大地をほんの少しでも見ることが出来、多少面倒くさいけど「まぁ、いいかぁ!」と思って納得。オリンピック開催で、さぞ進歩しているんだろうなぁと一人思っていたのだが・・・・。
そして最後に僕はイギリスがとても好きになりました。
又いつかきっと行くことがあるでしょう、きっと!
~*~*~ END ~*~*~